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「なんだその歯切れの悪い返事は? テストに自信がないのか?」
「自信がないのは元からだよ。晃と違って、僕は成績が良い訳じゃないし」
はぁ、とテストと殺気、二つの重圧に耐えきれず、僕は道端でため息を吐いた。
「そんなに不安なら私が教えてやったものを」
「いや、そこまでしてもらうのもなんか悪いよ。テストぐらいメリアさんの手助け無しで切り抜けなきゃ」
僕にもミジンコの心臓並みでも、一応のプライドがある。
彼女に勉強を教えてもらうというのは、彼氏としてどうだろう、と思ってしまった。
「……そうか」
僕の返事が気に食わなかったのか、メリアさんの声が少し低くなった。
何か悪いこと言っちゃったかな。
メリアさんからのせっかくの助け舟を無碍(むげ)にしたようで、僕は不安に駆られる。
「まあ、刀弥がそう言うんだ。私が口を挟むレベルにまで墜ちている訳ではないのだな」
すぐに明るい笑顔を浮かべ、うんうんと頷くメリアさん。
どうやら僕の勘違いだったようだ。
僕は少し心の苔(こけ)が落ちた気がして、気が楽になる。
「そうだね。なんでも誰かに頼っていたら、きっと堕落しちゃうよ」
「ははは、刀弥が堕落しても私は見捨てることはないから安心しろ」
重い空気はいずこかに吹き飛び、僕は周囲の視線も気にならなくなり、近衛学校に到着するまで、メリアさんと談笑しながら登校した。
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