研究所

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今にも倒れそうな顔色をした旦那が、頼りなげに馬を引いている。 「…はぁ…はぁ…げうぅっ」 戻した。 派手にやらかしている旦那。その少し後ろ(風上)から、ファフは水を用意する。 「はい」 「…はぁ…」 旦那は荒い息を吐きながら水を受け取り、一息に飲み下した。 しかし礼を言うこともなく、馬の手綱を取る。 「そんなに辛いなら一日ずらしても良かった、かな…?」 明後日の方を見ながら、ファフが呟いた。 「……よく言う」 振り返りもせずに一言だけ吐き捨て、旦那は歩を進める。 「研究所とはよく言ったもんね」 居住区から馬を連れ歩き、数時間の場所にそれは在った。 平屋の建物は、一見ひどく狭苦しく見える。 「…一世代前の核シェルターの使い回しだからな」 旦那が顔をしかめているのは、二日酔いの為だけだろうか。
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