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我が家に到着。
ガランとした部屋を見渡したら、さらに虚しさが込み上げてくる。
やる気も失せ、手に持っていた鍵と鞄を置き、冷蔵庫にもたれて足をポンと投げ出した。
妙に温かい背中に、冷たい床。
せつない気持ちが後から後から押し寄せて、下を向いたら涙がポタポタと落ち、台所の床を濡らした。
『身近に家族がいないって
こんな気持ちになるんだね』
『プラスに考えたら、自由の身
って感じじゃんよ』
『そうだけどさ。
何でそうも前向きなん?』
『お前に無いものを、オレが
持ってるからに決まってる
だろ』
『あら…そぉですか』
この日から、地味に生きることにした。
家→会社→家の往復カップラーメン生活。
心の寄り所は当時の彼氏だけだった。
家では、家族3人と1匹で撮った最後の写真を眺めながら、涙を浮かべる毎日がしばらく続く。
ホームシックであり、仕事の人間関係であり…様々な思いからの涙。
『母さん、私どうしたら
いいの……』
日に日に心が弱っていくのが手にとるようにわかった。
実家から毎週のように茶封筒に可愛い切手が貼られた手紙と、時々やってくる宅急便。
中身は手紙とカップ麺や牛肉の細切れや、魚、炊き込みご飯のおにぎり、オヤジの作った冷凍餃子。
届いたら、お礼の電話をする…
「あぁ、オヤジ。
宅急便届いたよ!ありがとう」
「そうか、そうか。
…元気でやってるか?」
「まぁね」
日常会話をするのだが、最後に
「頑張れよ!」
毎回エールをくれる父。
その度に涙が出て返事する声が篭ってしまう。
しかし、“頑張ろう”って気持ちが引き締まる瞬間でもあった。
それも束の間。
朝が来れば、仕事に嫌気がさす。
ふと、誰かに相談したくなり劇団時代から仲のよい4つ年上の友達に電話をかけてみた。
私が兄貴と慕っている人だ。(ハヤの存在は知らないが、ハヤと仲良くなった人)
「…ごめん、愚痴りたくて。
いぃかなぁ?」
「ど~した?」
どんな時もあったかいあにき。
1時間くらい話したかな。
この時、あにきの言った言葉が今も心に残っている。
「どんなくだらんことでも、
楽しんでやりな!
じゃなきゃ、時間がもったい
ないで」
すごく励まされ、頑張る気になれた。
コピーをする時もお茶くみの時も、嫌々ではなく楽しいと思うことで時間の流れを速めていた。
彼には、本当に感謝している。
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