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「レイラ」
男が急に誰かの名を言った。
「貴方は今からレイラだ。」
女は訳がわからない。
「私はレイラなんて名前じゃないわ。」
「だから今からはレイラ。」
「意味わかんない!」
絢芽は叫ぶ。
「逃げたいと思ったでしょう?」
ドキッ
「えっ…」
「現実から、嫌なことから解放されたい。誰か助けてほしい。
そう思ったのでしょう?」
男の声が絢芽の心に入ってくる。
確かに絢芽は全てが嫌になって店を逃げ出してきた。
貧しい家。借金を残し、消えた父。私を残し、死んだ母。生きる為に始めた水商売。こんな境遇に産まれた運命。
全てが嫌になった。
「私は貴方の味方です。嫌なことも辛いこともない世界へ連れて行ってあげましょう。絢芽という仮面を外し、レイラの世界を作ればいい。」
男の声が頭に響く。
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