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「リュージ!」
パスを貰うと俺はゴール下に攻め込み、自身に敵を引き付け、ウチのシューターをフリーにする。
「いけっ、スリーだ!」
3点シュートが決まるが、カウンターですぐに相手に返される。
「最後まで諦めんなっ!この試合勝つぞ!」
そうは言ってみたものの、結局波に乗れず、イージーミスからの失点がそれまでの均衡を破り、延長の末、82対91で高校最後の大会が一回戦で幕を下ろす。
泣いた。
泣き崩れた。
去年も泣いた。
去年は二回戦落ちだったっけ。
やっぱり4強には勝てないか。
それから自分の気持ちを落ち着かせるのには暫くの時間がかかった。
後片付けや、敗退後の仕事であるオフィシャルは後輩に任せ、俺は一人、家に帰ることにした。
靴を履き、自動ドアの硝子越しに外を見ると雨だった。
今日の朝、降水確率17%だったのに…
なんてあてにならない天気予報だ…
そう独り愚痴をこぼし自転車置き場に向う。
サドルは案の定、雨に濡れてびしょびしょ。
汗を拭かずに来たので、そんなことには構わずに股がる。ママチャリのギアはいつも2段目。
自転車を漕ぎはじめると疲れのせいで嫌に身体が重い。
ペダルを思うように漕げない。
そこでギアを一段下げ、一番軽くする。
軽くしたおかげで幾分、漕ぎやすくはなったがスピードはのらない。
ゆっくりとした速度で漕いで行く
道の真ん中に大きな水溜まりが出来ていたが泥はねなんか気にせずにその真ん中を突っ切った。
すると、石が重なってあったらしく
乗り上げてしまい
ハンドルを取られ横の土手に転がり落ちた。
幸い芝生で大した怪我もなく済んだが暫くの間、仰向けのまま雨が降る空を見上げ
一人声を出さずに泣いた。
雨と共に涙が流れる。
頬を伝う雨が流れなくなった。
「そんな格好してると、風邪ひくぞ」
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