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「…あ、どうも…」
昼間の事もあるせいか、どうにも二人きりは気まずい。さっさと出ようとした僕の肩を桐谷先生の手が捉える。
「な、なんでしょう…」
重たい目を桐谷先生に向ければ全く変わることのない表情が見えた。彼も相当飲んでる筈なのに。なんだこの差は。
「相当酔っているみたいだな」
さらりと言いながら僕の首筋に手を当てる。その手はひんやりとしていて気持ちよく、ついその感触に浸ってしまった。
「…っ!ぼ、僕、戻らないと…すいません」
ハッとして慌てて僕は手を払いのけてトイレを出た。何やってんだ、僕…。
部屋に戻ると、撃沈した中尾先生がいて、校長が締めの挨拶をしていた。
「え~、久々に、こうやって親睦を深める事ができて私は嬉しい!どうか諸君、これからもよろしく頼んだよ。あと、高村先生も今から一緒に頑張っていきましょう」
最後にみんなで乾杯し、漸くお開きとなった。
店の前に出て帰宅組、二次会組などそれぞれ分かれていく。僕も二次会に誘われたけど、具合が悪くてとてもじゃないが行く気にはなれなかった。
タクシーに放り込まれる中尾先生を苦笑しながら見送り、僕も一人歩き出した。
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