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湯船は珪哉が入っているから、僕は先に自分から洗うことにした。頭からシャワーを浴びるが、お湯が顔や腕の怪我してる部分に当たるとやっぱり痛い。ヒリヒリする痛みを我慢しながら、僕は手早く頭と体を洗い終えた。
「よし、じゃあ交代しよっか」
珪哉と交代して湯船へと入る僕。ちなみに腰にはまだタオルを巻いている。さてここからどうやって珪哉を洗おうかな…と、考えていると、珪哉から、湯船から出るよう言われる。
「お前は、ここ」
珪哉は僕に湯船の縁に腰掛けるよう言い、自分はその真正面に陣取った。位置的に、僕は少し上から珪哉を見下ろし…珪哉の頭は、ちょうど僕の胸からお腹ぐらいの位置にある。包帯を巻いた右腕が僕の腰を抱くように湯船の縁に乗せられて、ちょっと嫌な予感がした。
「頭から洗うよ?シャワー流すから、熱かったりしたら言えよ」
「わかった」
シャワーを出し、ある程度自分で温度を見ながら、下を向いた珪哉の頭を濡らしていく。
「熱くない?」
「ああ」
時折、珪哉の右腕が僕の身体をさすり、包帯のザラリとした感触にぞくりとさせられる。
「こら、邪魔するなって…洗うよ?」
一声かけて、僕は珪哉の髪に手を伸ばした。初めて人の頭を洗う僕。爪を立てないよう、注意しながら柔らかな髪の毛を泡立てる。
「…65点だな」
「は?」
頭を流し終え、顔を上げた珪哉は一言そう言ってボディタオルをこちらに放り投げた。
「何の点数だよ…はい、あっち向いて。背中洗うから」
珪哉の背中にタオルを滑らせて、右腕を濡らさないように慎重に洗っていく。
「あとは1人でできるよな?」
流石に下半身を洗うのは躊躇う…だいたい左手は使えるのだからあとは大丈夫なはず。そう思ってボディタオルを渡そうとした時、見上げる眼差しが僕を貫いた。
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