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店長の槙村が休みの日は、決まってオーナーの鈴原義美が手伝いに来る。
本来は紗香一人がいればいいのだが、紗香に体を触ってもらいたい義美は何かと理由を作ってはお店に顔を出す。
口うるさい割には、ろくな仕事も出来ない義美はバイト達に嫌われていたが、紗香にはうるさい事を言わないと言うか怖くて言えない為、紗香にはウケが良かった。
「紗香ちゃん、僕、売り上げの計算やり方わかんないよ~」だだっ子のように唇を尖らせながら言う、今年45歳になる義美。
「義美さんはあっちでコーヒーでも飲んでて下さい。私がやりますから」
「さすが、紗香ちゃん。僕が見込んだだけあるなぁ」と言いながら、手の空いている瞳に事務所のソファまでコーヒーを持ってこさせる。
男好きの瞳だが、年上過ぎるしイケメンでもないから義美の事は嫌っていた。
若い娘好きな義美だったが、愛想が悪く、メイクが怖い瞳はあまり好きではなかったが、よく働くみたいだし、自分の好き嫌いを仕事に持ち込まない義美である。
「ねぇ、今日は麗子ちゃんはいないの?」瞳が事務所から出て店内に戻ると、義美は売り上げ計算してる紗香に声をかけた。
「…。今、計算中」義美は地雷を踏んだらしく、紗香は恐ろしく不機嫌な声を出した。紗香は計算と言うか理数系が大の苦手なのだ。
「紗香ちゃん、ごめんね」今年45歳義美は、34歳紗香の機嫌を損ねないように、事務所に貼ってあるシフトを見た。
麗子は休みのようだ。
義美はまたソファに戻り、コーヒーをすすった。
売り上げ計算をしているのだから、今日の営業はもう終わりで、今から麗子が来るはずはないのだが、義美はわかってないようだ。
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