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開店の30分前になると、富岡兄弟と吉沢瞳が出勤してきた。
平日の昼は大体こんなメンバーで店を回している。
紗香は富岡兄弟の肩を抱いたり、吉沢瞳を抱き締めたりしつつ、開店の準備をする。
カウンターは瞳に任せ、富岡兄弟は厨房、紗香と槙村は厨房やカウンター、注文の品を持って行ったりとバタバタと動き回った。
午後2時を過ぎると、お客も引き、休憩をしたり、店内の掃除をする。
厨房のオーダーもないから、富岡靖がカウンターに出てくると、すかさず吉沢瞳が寄ってきた。
「今度、一緒に映画でも行きませんかぁ?」上目遣いで、可愛らしく首を傾げた。
靖は吉沢瞳が、どのバイトの男達にもこういう態度を取っている事は知っていたし、彼はこういうベタベタした女の行動が大嫌いだった。
「やめとく」靖がぶっきらぼうに断ると、瞳はまさか自分が断られると思ってなかったから、ちょっとムカついたが、背が高く、端正な顔立ちの靖は憎めない。
靖がダメなら、弟の結希がいる。
瞳はそう思い直し、結希が休憩から戻ってくるのを待った。
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