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荒れ果てた広野に一人の男が空を見上げながらボケッと座っている。
その男は、隣りで俯せになっている男に話しかける。
「おーい、あんた確かさっき煙草持ってるって言ってたよなー? ……うんうんそうだよな! おし一本もらうぜ~」
俯せの男から返事を聞く前にポケットから煙草をケースごと引き抜く。
まあ、返事など待っていたら彼は一生それには有り付けはしないだろう。
何故なら……
既にその男は息絶えているのだから。
「うわー、血でしけしけだよ…」
血の染みた煙草の中から一番濡れていない一本を取り出す。
「おおっ、ついたついた!こりゃついてるな~」
指からマッチのような火をだし、煙草をつける。運良く中にまで染みていなかったらしく火がついたそれを思いっきり吸い込む。
「げほっげほっ…っ!…血臭い…」
それでも火のついた煙草を捨てるのはもったいないのか今度はゆっくりと吸い直す。
彼がこの物語の主人公。
この時、彼はこれから自分がどんな人生を送るかなぞ、全く予想していなかった…
「うしっ、休憩終了っと!」
ういーす、初めまして俺の名前はルシファ=アスモデウト。
なに?なんだその悪魔の集合体みたいな名前はって?…ほっといてくれ、俺だって好きでこんな名前つけられた訳じゃないんだからよー…
「うわぁ、見事に全滅してるなうちの軍…」
辺りを見回しても、死体!死体!死体の山!!
よく自分だけ生き残れたな~、なんて呑気に考えながらお目当てのものを探す。
「お、いたいた」
俺の職業は傭兵。みんなは色々な街から町を渡り歩いてその日暮しのような生活をするような奴を想像しているだろうが、ちっちっち甘い甘い。俺はそんな計画性のない奴等とはひと味違うぜ?
「…おおっ、こいつはミスリルじゃねぇか!?まじかよ…」
そう、俺は副業としてこうやって戦場廃品回収業を営んでいる。え、この罰当たりって?
…うん、知ったこっちゃない!
まあ、このおかげで俺は他の傭兵達と違って街では豪遊の日々。はっきりいって金の入りは普通の賃金の倍以上だ。
「ミスリルか…、売れば5年、いや6年は遊んで暮らせるかも知んないな…」
しかし、今回は物が物だ。ただでさえ高級な武具は相当な値段がつくのに、それもミスリル製!頬が弛むのも仕方がないというものだ…
「うし、今回はこいつのだけでいいか…あんまり欲かきすぎたらいいことなんかおきねーしな」
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