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ぱっからぱから。馬特有の心地よい足音を響かせながら、混成部隊が進んで行く。
これまでの戦いで既に半数程度が死、または負傷を負ってしまった彼等。
しかし、相手に与えた打撃を考えればその被害は正に神懸かりと言ってよい程の軽微。
辺りからは段々と木々が少なくなり、次に向かう山岳地帯が近付いてきた事が分かる。
「ルシファ殿……、どうしたんでしょうか?」
カタリアが顔を曇らせながら、その原因であるルシファを見やる。
今、彼は少し離れた所で何故か全ての事が上の空な様な表情でポケンと空を見上げている。何度か話しかけたりはしたのだが、その度の返事がこれまた呆としたものでは不安は一際増えるだけだ。
「それは、妾にも分からぬ。あの者が語らぬのであれば、幾ら推測を立てようとそれはやはり推測にしかならぬ」
凛とした態度でカタリアに語るのはサテナ。
彼女もルシファの事が心配ではあるが、それと同様に信頼もしている。だからこそ彼女はルシファに託された自分の役割を果たす。
「ほれ、あの者の事を考えている余裕が童にはあるのかや?」
「……そうですよね。先ずは自分の役目をしっかり果たさなければ、ルシファ殿にも余計な心配事を増やしてしまいますから」
可愛らしく奮起するカタリアにサテナの頬も弛む。
「と、セラは何かあるか?」
そこでサテナは、カタリアと彼女の間にいるウルセラに話しかける。甘える様にサテナにくっついているウルセラが思案する表情のままサテナに振り返る。
因みに三人も乗せて平然としている馬の秘密は、サテナの強化魔術だったりする。
「はい、御姉様。…これは何か確信がある訳ではないのですが……。
魔軍では四天王と呼ばれる強き者達がそれぞれの指揮を執っているのですよね?」
ウルセラの問いにサテナは首を振り肯定を示す。
「我々と闘った魔術を主戦力とする者が一将。最初に当たった者は四天王ではないとの事ですので、ルートレード方面に一将、私達の帝国方面に一将、……そして私達の行く山岳地帯に一将…とすると、エマ方面に配置されていた部隊が一つ余る事になってしまいます」
そうウルセラが言い切ると、サテナはその右手を彼女の頭の上に乗せる。
「うむ、良き所に目をつけおったのう、セラ」
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