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頭を撫でられたウルセラは嬉しそうに目を細める。
「凄いねウルセラ王女は。まるでルシファ殿の様だよ?」
「もう…、それは言い過ぎよ。それに私、カタリア王の様に統治する者に必要な事が全然出来ないんだから」
カタリアの賛辞に憂鬱そうにそう答えるウルセラ。
「あれは努力すれば誰にだって出来る事だと思うけどな?」
「……その努力具合こそが、貴方の一番の才能なのかもしれないわね…」
カタリアの仕事ぶりを思い出して辟易するウルセラ。
「ふふ……」
そんな二人を優しく見守るサテナ。当初の話題とはずれてしまってはいるが、この二人には血なまぐさい戦争の話よりも、彼等に相応しい平和な、たわいもない話をしてもらいたいと思うサテナ。
「まるで聖母のようだ……」
そんなサテナを見る兵士達の心の中に、自分が残してきた母や妻、恋人、娘などへの想いが募る。中にはその光景に涙する者もいる。
それほど周りには平和を振りまく元魔王。
その一方で、
「おい見ろよ、今日の剣聖様……」
「ああ、今にも『もう飽きた、ここにいる全員殺す』とか言いそうなぐらい暇そうだ……」
朝から忘と呆けているルシファの様子を見ながら兵たちが囁きあう。
「この前あんなに魔族を皆殺しにしたのにまだ足りないのか?」
「おい、お前少し話し相手になって剣聖様のご機嫌とってこいよ!」
一人の兵士が隣にいる同僚にそう言うと、言われた兵は首が千切れんばかりに振って拒否する。
「無理、駄目ゼッタイ! そんなの確実に殺される!!」
「だよなぁ……」
「ああ、なんたって万殺万魔候だからな……」
街中にいるような一般人は、これ以上はないぐらいに緊張を生み出していた。
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