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「あら?」
ほんわかした顔で首を傾げるユリエラ。そこまで言われたからか、何かに気付いたのかぐるりとサテナを見回す。
そう、こう舐め回す様に……、
「……綺麗なお肌…」
「ぬわっ、その様に欲情した目で妾を見るなぁ!?」
そんな明らかに視姦する様な視線に腕で体を隠すサテナ。
同性だからか怒るに怒れないといったところか、顔を赤くしながらも実力行使をしようとはしない。
「って、お前は魔王に逆セクハラするなよ……」
「うふ、私達睡魔は大体どっちでもイケるから♪」
俺の魔王発言にも動じない、予想以上に大物な睡魔姉。そして、その大物っぷりに肩を落とす小物な俺。
「へぇー、お姉さんって魔王様だったんだ~?」
そう言って珍しそうにサテナへと近付くコウリア。
「ふむ。そう言われれば、うぬとは初見であるな。はて、うぬはユリエラの副官だという話だったが……?」
「あはは。こうちゃんってば、そういうぴりぴりというか、こうシリアスな空間が苦手ですからぁ」
困ったように『本当は直さなきゃいけないと思ってるんですけどねぇ』と話すユリエラ。
「…………」
「ん、どうしたのお兄さん?」
なんだろう、コウリアを見てると今の話にとんでもない説得力が生まれる。
自軍の大将が攫われるといった大ポカをかました俺たちの軍は今、為す術もなく強制的な休止に甘んじていた。
今の俺達に出来ることは剣聖殿を連れ帰るといって飛んで行ったサテナ殿ただ待つことのみ。
「ただ待つって、俺達はどこの帰還待ちの奥さんだ。こんな大の男が何十人も揃って……」
何にも出来ない状況。兵として、いや一人の人間としてここまで自分を情けないと思った事はない。
カタリア王子は剣聖殿の無事を祈って心を痛めているし、あのウォッシ殿ですらどこか落ち着きがない。
「あ~、ほんと頼むよ剣聖殿、マジで早く帰ってきてくれよ……」
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