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まだまだ俺たちの旅程は半分ほどしか終わっていない。
というか、あの人なしではこの作戦自体が成り立たない。あの二人がいなくて俺達だけが残るのと俺たちが皆死んであの二人だけが残るのでは明らかに意味が違う。前者が絶望の淵の敗残兵で後者が希望に満ちた明日の太陽だ。
「お、おいあれはなんだ!?」
連日の戦闘で疲れ、言い方は悪いがこれ幸いと溜まった疲れを癒しているはずの兵士たちの中から声が上がる。
彼の指差す方角は空。今の俺たちが待ち望んでるものが来る可能性のある方角であることに、俺は跳ねるように立ち上がり空を見上げた。
「3、4人か?」
もしサテナ殿があの人を連れ帰ってきてくれたのなら、人の影は2人に
なるはずだ。ということは、あれは魔族である可能性が高い!
「全軍、気を抜くなっ! 各それぞれ警戒を強化しろっ!!」
一瞬の隙などは作らない。あの二人がいなくなってからようやっと今までの自分が抜けすぎていたことに気付いたらしい。
もともと、魔族の方が人間よりも固体として優れているのだ。それに人が対抗するには、油断なく効率よく、そして命を賭けて。
それだけの覚悟が必要だということを、その魔族ですら余裕を持って葬ってしまうあの二人を見すぎていたせいで忘れていた。
「さあ来いよ。人間の実力、見せてやる」
段々と、、こちらに飛んでくるものの輪郭がはっきりしてくる。あの前にいる二人は……。
「あれ? 剣聖殿、とサテナ殿……のわっ!?」
飛んできた中にあの二人がいたせいで油断していたのだろう。こっちに向かって落ちてきた剣聖殿への認識が一瞬遅れ、危うく押しつぶされる所だった。
「どうしたのだ主よ、いきなり降りたいだのと?」
「いや、先に下りておかないとこいつらが攻撃されるかもしれないだろう?」
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