カモメ

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父の転勤で海沿いの町に住んだ事がある。   歩いて5分の所に海が広がってて、昆布を拾って遊んだもんよ。   拾った昆布をズルズルと引きずってきて、家の前にひろげて干す。     何が楽しかったんだ?      そのたびに母が困った顔をしてたっけ。   その母をもっと困った顔にさせたのが父。     昆布を大量に拾ってきたのかって?   いや、昆布なら可愛い。父が拾ってきたもの……拾ったというより連れ帰ってきたという方が正しいか?     カモメ。       「うめ、風呂場を覗いてみろ! 急に開けたらビックリするから、そーっとだぞ」   父に言われ風呂場のドアをそーっと開ける。   何者かと目が合った! 慌ててドアを閉める!     なんだアレは? 鳥……だよね?     「お父さんが助けてやったんだ」     翼を怪我して飛べずにいたカモメを助け、オロナイン軟膏を塗ってやり、浴槽に浮かべ今に至るという。   父の手は傷だらけ。     暫くうちの風呂場にカモメは居候する事になった。   家族は銭湯に通うことも決まった。     しかーし、家族会議で決まった案件はたった1日で終了。     なぜか?     カモメがうるさかったから。   風呂場で鳴くカモメ。   場所が場所なもんでエコーもかかる。   おまけにバシャバシャと水の音も加わる。     「うるさい!!」   父が怒鳴るがカモメは聞いちゃいない。     「うめの拾ってくる昆布の方がよっぽどマシ」   母もキレはじめてる。     翌日学校から帰ってくるとカモメはいなかった。   父が動物病院に連れていったという。   仕事に行く途中で保護したと言って、手におえないカモメを病院に押し付けてきた父……。   最初からそうすれば良かったんだよ。   我が家に平和が戻った。   相変わらず海から昆布を拾ってきて家の前で干すアタシに困った顔をする母。   「また拾ってきて……」     カモメよりマシって言ったじゃん(笑)。  
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