たしか石原くん

3/3
701人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
翌日、楽しみにしてた実験がスタートしたのよ。   スタートして間もなく気になることが……。     彼が鼻をズルズルとすするのよ。風邪かしら?可哀想……石原くん。     「大丈夫?」   アタシは彼の顔を覗きこんでそう言ったんだ。   その時アタシの目に飛び込んできたものは、彼の鼻の穴から垂れ下がる鼻水。   もっとビックリしたのがそれを袖で拭ったこと。     「大丈夫だよ」   そう笑顔で答える彼。   しかし、アタシの目は彼の笑顔より気になる一点だけを見つめていた。     これって乾くとどうなるの?   光ったまま?   それよりも石原くんが鼻水……。     自分だって鼻水のひとつやふたつ垂らすことくらいあるくせに、こういう時ってそれは高い棚の上に乗せちゃって、しまいにはアタシは鼻水なんて出ないくらいの勢いになるんだな……。     困ったアタシだよ……。    実験中、何人かの女子がやってきて言う。   「いいなぁ石原くんと実験」   「代わってあげるよ」   「えーっ! そんなの無理でしょ! 決まってんだから」   「石原くんと一緒で嬉しいくせに」    なるべく彼に聞こえないようにヒソヒソ話す。      ホントに代わりたかったんだよアタシは。     それからのアタシの石原熱は一気に冷めた。   氷点下まで一気に。     忘れ物もしなくなった。   お陰で先生にも褒められまくりだ。   参観日に来た母が、最近のアタシについて先生から聞かされ喜んでいた。   石原くんキライ宣言をしたアタシに、ライバルが 減ったと女子から喜ばれた。   みんなが幸せになった。     アタシ一人を除いてね。   こんな理由でアタシに嫌われた男子はあとを絶たない。     アタシって何様?(笑)  
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!