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始まり
燃えていた……。
まさに紅蓮の炎が我が身を滅ぼさんとばかりに身体を蝕む。
わけもわからず、どうする事もできず、ただその中で泣いていた。
何の因果か…我が身はその炎の中で身をていしていたのだ…。
運命(サダメ)に縛られるは人の運命。
神から降されし、裁判に逆らうは邪道の域。
それを知ってか、赤ん坊は炎の中から開放されたわけでもないのに泣き止み、静かに眠りに入るのであった。
それを一人の男がソッと肩に手を置きながら、静かに微笑む。
「自分の正義を貫ける立派な人間になりなさい。私のように運命から目を背けてはならないよ。それだけが私の望みだ……。」
赤子にそんな言葉が理解できるはずもない。ましてや産まれたばかりの赤子がそれを理解できる知識を持ち合わせていたらそれこそ驚愕の事実といえる。
だが、確かにその赤ん坊は、うんと頷いたのだ。
それに満足したのか、男は燃え盛る炎に身を委ねるように姿を消した。
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