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朝日が木漏れる。
木々を縫うように光は通過し、やがてその光は地を照らす。
のだが、いま木漏れ日が照らすのは木々でも、ましてや花でもない。
日が照らすのは、不自然に倒れた少年の尻だった。
頭から突っ込んだのか。
顔は地面にべたりとつけて、両膝が奇妙に地についている為に、自然突き出される尻。
「ん……んあ?」
少年――天宮 嵐は目を覚ました。
「どこだ?此処……」
顔についた泥を払い、その場に座りこんだ状態で辺りを見回す。
辺りは木、木、木、熊。
「ん?」
目を凝らすように嵐はもう一度辺りを見回す。
木、木、木、熊。
やはりいる。余計なのが。
嵐が手を伸ばせば届くような近さで、熊(?)は嵐を見下ろしていた。
「あれ?これ熊か?」
嵐はもう一度目の前の生物を観察する。
3メートルはあろうかという体躯に茶色の体毛。
ここまでなら疑いようなく熊なのだが、丸太のように筋肉質な腕。
頭には牛のような角、口には猪のような牙。
「熊ってこんなマッチョなのか?」
よりにもよって疑問はそこか。
「グオオオォォッ!!」
「うぉ!?」
大地を揺るがす程の声。
木々に止まっていた小鳥は身の危険を感じ一斉に飛び立つ。
熊(?)はいつまでも動かない嵐に対し、その隆々な腕につく爪を振りかぶった。
「えいっ!!」
突如、熊(?)は背後から来た何者かによって――
蹴りとばされた。
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