とある嵐

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熊(?)は後頭部を強打して、まるで泣いて逃げるように木々深くに走り去った。 「たく。また人襲ってたのね」 嵐は言葉を失った。 あのマッチョな熊(?)に対して跳び蹴りを放ったのがどんな人物かと思えば、 「大丈夫?」 深い海というよりは、澄み渡る空色のショートカット。 目はくりっとしてて、女性というより女の子。 正直に言って可愛い。 「もしもーし」 とりあえず、嵐が今まで会ってきた女の子――主に学校の中でも、彼女ほどの可愛い子はいないだろう。 「聞いてるの?」 声もなかなか。 声を伝える方法はないので、それは想像に―― 「ちょっと……いい加減にしなさい――よ!」 「んぎゃ!」 そんな可愛い女の子に鉄拳を受けたのは、嵐にとって初めての経験であった。 「な……何故に?」 地面にキスをした状態で、嵐は少女に尋ねた。 「ノリよ」 少女はすっぱり言ってのけた。 「り……理不尽だ」 もっともだ。
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