とある嵐

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「着いたわ」 森から出ると、アリスはそう言って少し先の村を指でさす。 「あれがあたしが住んでる村、《シモツキ》よ」 「あーー…」 「何、嬉しくないの?」 ぼんやりと複雑そうな表情で遠くの村を眺めている嵐に、アリスは尋ねる。 (やっぱ森っていうのも変だとは思ったけど、村って……マジで村じゃん) 遠目ながら、村の建物の様子などは見て取れる。 その様子は、どうも嵐が住んでいる所とはかけ離れていた。 (此処日本のどこかなー。 いや、そもそも日本という前に此処は地球なのかも怪しい) 嵐は森の中で見ていた夢――らしきものを思い返していた。 銀髪の鎧の青年レイン。 彼の言葉もいまはしっかりと覚えている。 「なあ、アリス」 「なによ」 「《日本》って知ってるか?」 アリスは少し黙った後に、 「何が2本なの?」 そう答えた。 「じゃあ《地球》は?」 「チキュウ?」 「もういいや」 アクセントを聴いただけで、彼女が知らないという事を悟ると、嵐はため息をつきつつ村に向かって歩き始めた。
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