とあるドア

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「お前もほんといい度胸だよな」 弁当箱を広げながら、さっきの件を笑うこの男。 名は朝日 時雨(アサヒ シグレ)。 嵐とは小学校の時からずっとつるんでいて、親友……という言葉は恥ずかしいから、腐れ縁と説明する。 「どうゆう意味だよ」 「馬鹿って意味だよ」 ククッ、と大声で笑うのだけは避けるように、でも笑うのを隠す気はないよう笑う時雨。 「っせーよ。眠かったんだ。 しゃあねえじゃん」 そう言いながら、嵐は手元のサンドイッチを手にとってかじりつく。 「自由で羨ましいな、お前」 「おまえが言うか?」 時雨に羨ましがられる男はそう簡単にはいまい。 顔良し、頭良し、運動神経抜群、性格も気さくで人が良く、おまけに結構なお金持ちときたもんだ。 天は二物を与えずとあるが、天はこの男に何物与えれば気が済むのやら。
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