1304人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
「帰ろうぜ、嵐」
「おー」
最後の授業が終わると、時雨は飛ぶように嵐の席に近づいてくる。
2人とも部活には入ってない。嵐も、運動だけは時雨とタメはるぐらいの自信はあるが、共に『面倒』という理由で入っていない。
他愛ない話しをしながら2人は帰り道を歩き、寄り道多少に時計が7時を回った頃、やっと別れた。
「じゃあ、また明日な」
そう言って手を振りながら、時雨の背が見えなくなる。
そうして嵐も今度は1人で帰り道を歩いていた。
「おかしい……」
別に家に帰れないわけじゃない事は言っておく。
高校生になってそんな馬鹿な事態になりはしない。
おかしい、といったのは静かすぎるから。
たしかにいつもこの時間帯は人通りは少ない方だが、時雨と別れてからまだ1人として会わないのは少し変だ。
と、嵐は道端に見つけてしまった奇妙なものに足を止めた。
「ドア?」
そうドアだ。
道のど真ん中に、不自然に立っている洋造りの両開きのドア。
「寝不足かな?」
嵐は目をこすって自問する。
ちなみに、夜11時に寝て朝7時に起きて、授業の約半分を寝て過ごす者が寝不足なら世は睡眠不足の人で溢れかえっているだろう。
最初のコメントを投稿しよう!