とあるドア

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「いってて……」 見事、頭から着地を果たした嵐は頭をさすりつつ涙ぐむ目で辺りを見回した。 辺りには降り注ぐ雨。 絶え間ないどしゃ降りなのに、嵐の体は不思議に濡れない。 「CGかな?」 そんな筈はないだろうに。 不思議雨に首を傾げつつ、もう一度辺りを見回してみる。 『大丈夫ですか?』 嵐にそう声をかけてきたのは、白銀の鎧を身に纏う、髪の長い青年だった。 整った顔だちはまるで女性のようで、鎧と同じ銀色の長い髪が、腰辺りで風に揺れていた。 『大丈夫ですか?』 にっこりと、青年はもう一度嵐に問いかけた。 「ああ、うん。大丈夫」 戸惑いつつも答えた嵐に、青年は『そうですか』と笑った。 「あんた誰だ?此処どこだ?」 『1つずつでも構いませんか?』 たたみかけるように質問する嵐に、青年は苦笑気味。 『私の名はレイン。 此処は、そうですね……私の居る空間とでもいいますか』 「あんた此処に住んでるのか?」 『ええ。……天宮 嵐君』 青年は――レインはわざとらしく最後に付け加えて喋った。 嵐はそれに眉をひそめる。 「おまえ…… こんな雨のとこに住んでんの?」 嵐は別に頭は悪くない。 ただ、バカなだけ。
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