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「いま世界を救うって聞こえたけど、気のせいか?」
『その通りですよ』
再びにっこりと笑うレイン。
「オレに環境問題や核問題解決しろって?
それ遠まわしに総理大臣になって下さいって言ってんの?」
無理無理、と嵐は顔の前で両手を振る。
その言葉と行為に、レインは楽しそうに笑った。
『違いますよ。
『あなたのいた世界』ではなく、あなたの世界とは別の『こちらの世界』を救って欲しいのです』
「……」
適応力抜群の嵐は黙る。
何を考えているのか。
はたまた何も考えていないのか。
「わけ分からん」
考えても分からなかったらしい。
突然『世界を救え』と言われただけで分からないのに、『別の世界』だのなんだのと嵐の頭はぐるぐると回っていた。
どこぞのファンタジーじゃあるまいし。
『あ』
レインはどしゃ降りの、暗雲たちこめる空を見上げた。
「どうしたんだ?」
『時間が無くなってしまいました。
次に来る時は、あなたも少しは状況が呑み込めていると思います』
嵐にとっては、『今』青年が言っている言葉が何一つ分かっていないのだが。
と、突然嵐の背後に例のドア。
降ってきたのか。沸いてきたのか。はたまた、始めからそこにあったのか。
嵐がドアの存在に気がつき振り返ると、すでに開いて待ち構えていたドアに吸い込まれてしまう。
『もう一度、次に此処に来る時は、あなたに私の力を与えますよ』
どしゃ降りのなか、閉じられたドアに向かって白銀の青年は呟いた。
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