アトリエ

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『その間は誰かが入れ替わっていたというのか?』私の声はヤマディーノの呼び声にかき消された。 『大変だぁ!!!生存者だ!!!』湿度の高い静まり返った地下室に、その声は痛い程響きわたった。 ヤマディーノは既にアトリエの先の地下牢にいた様だ。 カビ臭い床、常に血が混ざり合った空気に腐りかけた壁。 地下牢は暗く、私たちは懐の懐中電灯のスイッチをいれた。 錆びた鉄格子がいくつも並んだ先にヤマディーノは、間に手を伸ばしている。 『ナベリア!鍵だ、鍵を探せ!キーダーは衛生班に連絡を。かなり衰弱している!』 アトリエの引き出しを片っ端から開けてようやく鍵を見つけた。 黒い錆びた南京錠の鍵だ。 暗い牢獄にライトを照らしながら鍵を開ける。 牢の中にはやせ細り、ブラウンの髪を振り乱した若い女が衰弱しきって倒れこんでいた。 まるで生気を感じないが、確かに呼吸をしているのがわかる。 ある意味、この吐き気をもよおす死体だらけの異空間のような部屋では、彼女の呼吸こそが異質に思えた。
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