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身元
9月27日
AM9:56
病院につくと既にキーダーとその部下がロビーで待っていた。
『おはよう警部。彼は?』
部下は長身の東洋人で爽やかな紺色のスーツを着ている。
『彼は日系三世の佐竹だ。俺の2コ下の後輩なんだ。ホラッ教授に挨拶しな。』
『おはようございます教授。以後お見知り置きを。』佐竹君は軽く会釈をした。
『では行きましょうか。』キーダーは病室に連れて行く。
彼女は今、昏睡状態にあるらしい。まぁあんな状況に居たんだしかたがないだろう。
病室に着くと彼女はいくつもの点滴と、酸素吸入機に繋がれていた。
『彼女の身元は割れたのか?』私はキーダー警部に聞いたつもりだったが、佐竹君が答えてくれた。
『彼女の名前はタケウチーナ・クリスティ、18歳。アリゾナ州出身で、ロスの大学に通っていた。行方不明になったのは一週間前で、通報が入っています。両親はさっきまで面会にきていました。』資料もなしに、彼女のプロフィールを教えてくれた。
彼はなかなか優秀なようだ。
私はさすが、キーダー警部の選んだ部下だと関心した。
『なるほど、一週間は殺されないようだな。』キーダーは彼女の寝顔に目をやった。
酷く傷つけられたのだろう傷が生々しく遺っている。
すると、病室のドアが開いた。『あらら、面倒事を持ってくるメンツが揃ってるな。』無精髭を蓄えた白衣の似合わない男が入ってきた。
『あぁ、この娘はあんたの患者かい?』私は少し安心した。
彼はホワイト・ガーランド。
私の知る外科医の中でも間違い無くトップクラスの名医だ。
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