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真白に研かれた壁、
一切埃の無い空気、
そのどれもが、ここは外の世界とは別世界だということを物語っている
一本道のその廊下には
幾層もの強化ガラスの門が行く手を遮っている
その門の一つ一つに指の静脈認証・網膜スキャナなどのロックが施されているという厳重ぶりだ。
まさに蟻の這い出る隙間も無いという漫画でしか使わないような台詞が当て嵌まるだろう。
この厳重な警備。
一体何の為にあるのだと思う?
大量殺戮ウィルス兵器の開発?
凶暴な生物兵器の研究所?
はたまた宇宙人を極秘に開発?
そのどれもが間違いだ。
この先のドア…
恐らくは数億$はかけたであろうこの施設は……
なんとたった一人の男の為に作られたのだ。
私も最初は笑い話にしても出来が悪いなと看守に言ったんだよ。
看守は何も言い返さなかったがね。
しかし、
数回にわたる念入りなボディチェックをすませ、
強化アクリル製の門をひとつくぐる度
吐き気と背中に走る悪寒が強くなってゆく
同伴していた看守が
『始めはみんなそうですよ。お気になさらないで下さい。私も彼に直接会うのに丸二日かかりましたから。』と気を遣ってくれた。
そして最後のドア。
ほんの数分が何時間にも思えた。
この先に『彼』がいる
看守が二人がかりでドアを開ける。
目に飛び込んだのは全身拘束具を身に纏った男。
マスクが丁寧に外されると20代後半から30代前半の金髪の男が姿を表した。
美しくも冷たい瞳と目が合う。
生唾を飲み込む…
挨拶をしようとしたその時
『初めまして。僕に用があるというのは貴方かな?』
透き通った綺麗な声が訪ねた。
彼が合衆国史上、最大にして最悪の殺人鬼
トヴィオ・ショウ・タイラーだ。
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