ｺｰﾙﾄﾞ･ﾌﾞﾗｯﾄﾞ

第一幕

『今日の夕刊はさぞ盛り上がるだろうな』とキーダーが皮肉った。

この事件が起った事により、先の洋館での惨劇の事が明るみに出てしまうのは時間の問題だ。

それは即ちタイムリミットができてしまったということに他ならない。

『状況は決していいとは言えないな。』キーダーは埃を被った時計台の最上階を念入りに調べ始めた。

昼間なのに薄暗い中。
夜は漆黒に包まれていたに違いない。

キーダーの捜索も空しく主だった犯人の手掛かりやメッセージは何も見つからない。

私は薄々感付いてはいたが。「彼」が別に私達に挑戦している訳で無く、ただ自らの欲望のままに犯罪を犯しているだけだということを。

下の現場から佐竹からの連絡。

『キーダー警部！とんでもないことになりました!!!殺された被害者はボルフィーノファミリーのドンの妹です！』
携帯電話から予想だにしない事実が告白された。
キーダーは事の重大さを瞬時に理解した。

ボルフィーノファミリーのドンは大変な仲間思いの人望家で有名だ。

仲間のためであればどんな手段を使っても報復する。

ましてや彼のたった一人の肉親である妹。

矛先は当然、激しい対立中のザネッティファミリーに向くだろう。

ヘタを打てばロス・アンジェルスの街は戦場になってしまう。

全身の汗が冷たく逆流した。