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彼女は白だった。
白としか言えないほど、上から下まで真っ白で、雲に血を垂らしたように、ぽつぽつと透き通る瞳だけが深紅だった。
汚れひとつない雪のような肌に、真っ白なワンピースをきて裸足で地面を歩いていた。
唇も、眉毛も、まつ毛までも白かったが、真っ白な彼女は美しかった。
後に続くように、あどけなさが残る、ブロンドの髪の少年が彼女の後ろを歩く。
「ねぇ、薔薇。裸足で歩くと、足を怪我するよ」
少年は女の子のような高い声で言う。
薔薇と呼ばれた真っ白な少女は、振り返ることもせずに言った。
「私は怪我をしないもん。いいの」
「でも靴履いてないと、何だかおかしいよ」
「いいんだよ、ユウリ」
ユウリと呼ばれた少年は大きな荷物を背に担いでいる。
華奢な身体には不釣り合いなほどに大きな荷物だった。
「あれ、なんだろう」
ユウリが言った。
草原の向こうに、人の姿が見えた。
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