42人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは…季節の変わり目。
前日よりもギュンと気温の上がった朝。
前日から嫌な感じはしていた。
でも、病気ではないし休む訳にもいかず、いつもより重い身体を引きずる様に駅に向った。
ホームに着くと、すぐに電車が滑りこんで来た。
人波に飲まれる様に乗り込む。
満員電車。
嫌な汗がでる。
上手く動けなくて、“安全地帯”が確保できず!人の波に飲まれ電車の連結部分の開いたままの扉の“レール”の上で動けなくなった。
頭ではぼんやりと、“ヤバい”なぁと思う。
でも、どうする事も出来ずに電車は走りだす。
次の駅のアナウンスが流れた時。
…来た。
一気に視界が暗くなる。
ガタタタン
電車がカーブに差し掛かり傾く。
それに合わせて、開いていた扉がぐらっと動き、閉まってくる。
身動き出来ない。
窮屈で手も出ない。
ぶつかる!!
思わず目をつぶる。
ガシャン!!
激しくぶつかる音。
でも痛くない。
恐る恐る目を開くと、狭い視界のなかで、紅が見えた。
「あんた、大丈夫?」
低い声が背後の高い位置から聞こえる。
緩慢な動きで見上げ、頷く。
この人が近くに居るなんて…気付かなかった。
「…全然ダメだろ。」
グイグイと腕を引かれ、気付くと駅のベンチに寝て居た。
最初のコメントを投稿しよう!