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感覚が浮上する。
明るい。
自分が寝て居る事に気付いて慌てる。
「おい!急に動くなょ。」
頭上からの声に肩を押され戻される。
グラグラと回る感覚。
横に戻され、眩しさに慣れない目を凝して見れば、紅。
「あんた、貧血?」
紅の声は、低くて耳に心地良い。
「おぃ。病院とか行くか?」
気遣わしげな声。
「いぇ。大丈夫です。」
ゆっくりと起上がる。
グィ
二の腕を掴まれる。
大きな手。
腕がガッチリと掴まれて、余裕がある。
「あんた、どこまで行くんだ?」
辺りを見れば、降りるはずの駅の一つ前の駅のホーム。
「次の駅です。
あの…お急ぎのところ申し訳ありません。
ご迷惑をおかけしました。」
ペコリと頭を下げる。
「いゃ、別にかまわねぇよ。」
顔を上げ、真っ直ぐに顔を見る。
肩に流れる紅の髪。
片手で口元を隠し、しかめられた眉。
反らされた視線。
どこを見ているのか…と思えば、その先にはホームの電光掲示板と時計。
遅刻だ。
この人も遅刻させてしまったんだ…。
本当に申し訳なくないなる。
「本当に申し訳ありません。
もう、大丈夫ですから。」
もう一度、頭を下げて立ち上がろうとする。
すると、また二の腕を掴まれ、支えて引き上げてくれた。
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