半透明な夢を描く

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「無理やっちゅうねん。オレは例え評価の部分が優れてても、楽器は一切出来ひんから」 「オレも。バンドとか向いてないから無理や」 このふたりがいれば絶対に有名になることは確実なのに、ふたり共バンドにはまったく興味がないらしい。 こんなにいい才能を持っているのに、もったいない、と心底おもう。 「あーあ…誰かええやつおらんかなあ…」 なんて嘆いてみても、現実というものは厳しい。その厳しさは今まで幾度も味わってきた。 ビールのジョッキにうつるオレの顔は、未来に不安を抱いた顔そのものをしていた。
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