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横山たちと別れ、渋谷は鼻歌を歌いながら古びたアパートの階段をリズムよく駆け上がる。
「おっかえりー」
がちゃり、と扉を開けた途端、呑気な間延びした声が渋谷の耳を抜けていく。声の主を確認した渋谷は盛大にため息を吐き出した。
「まぁた不法侵入か、広瀬!」
雑誌などが散らばる床に寝転びながら、漫画をパラパラと捲る女。この女こそが、声の主なのである。
「不法侵入だなんて失礼な。様子見に来てあげたのー」
「毎日会ってるがな」
何を言っても聞かないことは、もう百も承知。この女はいつもいつもひとの話を聞かないのだ。
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