ニヒルな現実像

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そんな横山と渋谷は、当たり前のごとく担任からは進路の心配をされていた。成績がどうの、単位がどうの、って耳を塞ぎたくなるほどに。 《オレ世界一のフリーターになるから、ええもーん》 なんて呑気に言いながら、ゲームに没頭していた横山が懐かしいくらいだ。ゲーム好きはいまでも変わらないが、そんな横山が立派な社会人になっているから驚き。 結局、我が儘言って“大人”になりきれていないのは渋谷ひとりだけだった。 そんなことは気にもせず、横山と村上は相変わらず渋谷と一緒にいるのだが、渋谷は時々やるせない感情が芽生えていた。 《なんでオレは、》 《“大人”にならなあかん》 《我が儘言ってる場合ちゃうのに、》 どうしても、諦めきれない夢に時に絶望した。
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