プロローグ

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 戦争に勝利した人間は、エルフが住む森を焼き払い、生き残ったエルフを虐殺した。  また、女、子供は奴隷として扱われ、エルフの一族は滅びたかに思われた……。  焼け野原となった場所に、長身の女性が立っている。  女性はフードの付いたコートを羽織っており、フードにより顔を隠している。  視線の先には、荒れ果てた大地がある。 「……私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。すまない」  女性が目を閉じる。  脳裏に浮かんでくるのは、自分を守るために死んでいった仲間達の姿。  焼き払われる住み慣れた森。  気がつくと、涙が溢れていた。 (いまは、泣いてる暇なんてない。生きなければ。皆の分まで)  女性はゆっくりと目を開いた。既に涙は止まっている。  もうここにはいられない。  住み慣れた土地に背を向け、歩き始めた。  一瞬、彼女の行く手を阻むかのように逆風が吹いた。それにより、フードが風に押され女性の顔が露になる。  肩で切り揃えられた翠色の髪、宝石のような瞳。先の尖った耳が、彼女が顔を隠す理由だ。  女性は再び顔を隠すようにフードを被ると、安息の地を目指して歩き出した。
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