プロローグ

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 二人の距離が少しずつ縮まる。  陸は足を止めた。  重心を前に移す。  前傾姿勢のデトロイトスタイル。超攻撃型の構えだ。  陸が纏う独特の雰囲気にリング場が包まれる。  それに耐えきれなくなった部員は、顔と胸を両腕で隠すようにガードを固め、被弾覚悟で飛び込んできた。  狙いはインファイト。 陸の得意パンチである、フリッカージャブを打たせないためだ。 (無駄なことを)  陸の左腕がしなる。放つ。  フリッカージャブ。  一般的なジャブとは異なる軌道で相手の顔面を捉える変則ブロー。鞭のような拳が襲いかかる。 「ぐっ!」  両腕に痛みが走る。部員は思わず声を上げ、足を止めた。  陸の拳は止まらない。フリッカージャブをガードの上から叩き付ける。 「がはっ……」  ガードの隙間から、左拳が顔面を捉えた。部員は思わず後退した。
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