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ズザザザッ―…
冷たい床を滑るようにして、後退り距離を取り自分の鼓動がドクドクと速く動く、
いきなり目を開けた相手に驚きを表すがそれよりも…、
俺は今、何をしようとしたっ?!
眠る相手へ、手を出しそうになった自分の行動に後悔…
そして未遂だった事に安堵した。
悠の姿に気にもせず、眠っていた者は身を起こし辺りを見渡す、
「ここは、何処だ?」
第一声が耳に届き、悠は下げていた頭を上げた。
凛として響くような、思ったよりも低い声と黒真珠の様な瞳がジッとこちらを見つめる…
「えっ…あ、ここは俺の家…」
自分を指差し、しどろもどろになりながらも答えれば「…そうか」と一言返ってくる。
そのまま黙り込む相手に慌てて近付き、
「あのさ!!…あの、アンタってもしかして…………………かぐや姫?」
直球に聞き過ぎたかと、一瞬焦るが、目の前の人物は綺麗に唇で弧を描き、
「いかにも、そう呼ばれている…」
驚きと予想通りの答えに、再び口を開くが、
「ほんとに…かぐ「けれど…」
「我は、“姫”ではない」
意味の解らない答えに頭を傾げれば、骨張った相手の白い手に自分の手を掴まれ、
相手の胸に手を当てさせられる。
「………!?」
厚い着物の上からでも分かる程の平らな胸に、先程の言葉を理解した。
「お…おと、男!?」
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