男の部屋

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男の部屋

待ち合わせ時間に男はビルの影からヒョコっと出てきた 背は低く年は30歳くらいだろうか まずカラオケへ行った 「俺なんでも歌えるから好きな曲いれてみな」 難しい女ボーカルの歌を入れてみたが、音程もとれず全く歌えていなかった カラオケを出ると男はこう言った 「今帰ったら紹介しないよ。紹介ほしいんだろ?ちょっとついてこいよ」 「もういいです!!」と言って逃げ出したかったが、男の有無を言わせない雰囲気に飲み込まれてしまった コンビニへ寄っておにぎりやカップ味噌汁などを買い、連れて行かれたのはだんだんと暗がりの方へ 住宅街を曲がりくねって、もう来た道もわからない 着いた先は男のアパートだった 男の部屋に入ってはいけない 頭ではわかっていたが ヘビに睨まれたカエル 逃げ出せなかった 部屋に入ると男は昔の自分のアルバムを見せた 「このすごいバイクに乗ってるのは俺。高校の頃はこの辺りでは知らないヤツはいなかった。ちょっと声かければ仲間が何人でも集まってくる。お前をこの街から追い出すなんてワケないんだぜ。」 私はますます恐ろしくなって、男のいうがまま腕相撲をすることになった ルールは 私が勝てば街まで送ってもらえる 私が負けたら乳首をさわらす すごく理不尽なゲームだったが、勝てば帰れる、そう思った ゲームは私の勝ちだった 私は腕相撲が強く、これまでにも何人かの男の子達に勝ったことがあった これで帰れる!と思った私があまかった 「さっきのはズルだ。やり直ししないと帰らせない。」 そう男が言ってきた なにがどうズルなのか ただ男は目的を達したいだけのようだったが顔は必死でかなり気迫があり 私は自分の意思とはうらはらにもう1度腕相撲をさせられることとなった 男はどうしても勝ちたい一心で自分に有利なように私の腕を既に半分倒したところからスタートさせようとした 私も 「それはダメです」と抵抗したが 男は 「これで始めないと勝っても帰らせないよ」と突っぱねた 今にして思えば、たとえ夜中で道に迷っても部屋を飛び出していけばよかったと思う なんで当時の私にはそれしきの勇気がなかったのか 男の 「俺が声かければ仲間は何人でもすぐに集まる。 お前をこの街から追い出すなんて簡単」 という言葉が頭から離れなかった 男がいつ仲間に連絡するかもしれない恐怖 男を怒らさない方がいいように思えた
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