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「ねえジュン」
真紅はにぎやかな玄関を見ながら言う。
「どうした?」
「私、今とても楽しいわ」
その表情は確かに楽しそうで、ジュンはそれを見てほおを緩ませる。
「僕もだ。今夜はきっと凄いことになるぞ」
「こういう楽しい日々が、これからも続いていくのよね?」
真紅の問い。それはまだ見ぬ未来を指している。未来のことは誰にもわからない。だがジュンはこう答える。
「ああ、続いていくよ」
「本当?」
「ああ、本当だ。僕達みんながこれだけ苦労して、手に入れた平穏なんだ」
ジュンは雪華綺晶との戦いから今までの16年間を思い出す。この16年はもう取り戻せない。しかし、これから先はその16年間が無駄じゃなかったと思えるくらい楽しい日々が続く。ジュンはそう信じている。
ジュンは自分の隣に立つ紅のドレスを纏った人形を見る。ジュンにとって世界で一番いとおしくて大切な人形。彼女の幸せそうな姿を見るだけで、ジュンは16年間頑張ってよかったと思えた。
「ねえジュン。ゲストがきたのだから私達ホストはちゃんとおもてなしをしなきゃいけないわ」
その人形はジュンの顔を見上げて言う。
「ジュン。紅茶を入れて頂戴」
――END
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