2.マエストロ

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2.マエストロ

 地下室でジュンは黙々と作業を続けている。机の上だけに灯りを点けており、地下室全体が暗い雰囲気に包まれている。 「ふぅ」  服の袖で汗をぬぐう。 「これさえ完成すれば……」  机の上には様々な器具や得体の知れない液体、金属など、たくさんのもので溢れかえっている。  試験管の中に2種類の液体を混ぜる。煙がたつ。 「っ! くっさ」  形容しがたい臭いが立ち込める。 「これでも合わないか……」  試験管の中の液体を水道で流して捨てる。試験管をゆすぐ。 「今度こそ」  また別の液体を試験管の中に混ぜる。煙がたつ。しかし、先ほどのような臭いはしない。 「お、いい感じだ」  試験管を振り、よく混ぜる。すると、しゅーという音がしたと同時に試験管が破裂し、ジュンの服と机に液体が飛び散った。 「最悪だ」  机の上を雑巾で拭き、試験管を水道でゆすぐ。 「くっそ……」  うまくいかないことに対する苛立ち。 「これさえ完成すれば……。これさえ完成すれば……」  力を込めて拳を握る。 「あの扉の向こうに……あいつらのところに行けるのに」
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