雨の日に

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「これ、綺麗でしょ?」 それは黄色い花で、なるほど、素人でも綺麗だと分かる。 「これね、あの子がはじめて来た時に買った花で、それからずっとこの花を買ってるの」 「へぇ、あのこれ、花言葉とかは」 ずっと買っているという事は、何かこだわりがあるのだろう。 しかし、そんな私の予想を裏切るように、店員さんはクスクスと笑った。 「別にあの子は花言葉とか、気にしていないわ。ただ、初めて来た時に一緒にいた“女の子”がこれを選んでね」 「一緒にいた、女の子ですか」 「えぇ、かれこれ十年近く経つわね」 一緒に居た“女の子”? まずい、謎がどんどん増えていく。 『彼』を追いかけて着いたのは、河川敷。 朝に降った雨で幾分かぬかるんでいるが、歩くには問題ない。 そこで『彼』は川を目の前にし、考えるように呟く。 「今日は、『雨』だった」
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