交ぜても混ざらぬ朱と蒼

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突如僕の目の前で炸裂した、肌色の衝撃。 それは、蒼凪の手だった。 「…猫だまし?」 「違うって」 蒼凪の手が僕の顔前からひかれ、変わりに意外と整った顔が僕を覗き込む。 「どーしたのさ、ニョホ~として?」 …ニョホ? 「うん、何というか…」 「なに?」 僕は、躊躇わなかった。 「蒼凪にも“裏”があったんだな…って」 「裏?」 「うん、裏」 蒼凪はいまいち理解出来ていないような表情をしていたが、やがて閃いたように手をポンッと叩いた。 「もしか、さっき言ったやつ信じた?」 …は? 「は?」 おっと、内心が口から出た。 いやそんな事はどうでもいい、それよりも今は… 「それは、どういう…」 「だから、さっきの冗談を真に受けたのかって」 蒼凪の言葉が、脳の中で上手く処理できない。 冗談? ええと…それは、つまり… 「うわ正気? おじさんが男を顔なんかで選ぶわけないじゃん」 蒼凪は僕の前に仁王立ちしながら、呆れたような顔でそう言った。 「…え?」 「だいたい、今の時代じゃ顔なんて幾らでも変えれるじゃん」 …それは言っちゃダメだろう。 「それにぃ…」 「それに?」 蒼凪は僕が食い付いて来たのを見ると、悪戯っぽく笑って言った。 「顔で選ぶなら、もっと良いのいるしねぃ」 ……悪かったね、並で。
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