交ぜても混ざらぬ朱と蒼

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「じゃ、さっきのは…嘘?」 「あたりきよぅ」 僕の問いに、とてもいい感じの笑顔でサムズアップする蒼凪。 あたりきとは、当たり前という意味だろうか? 「つーかね、裏って何さ?」 蒼凪はそう言いながらズズィッ、と僕の方に一歩詰め寄ってきた。 いきなりの接近に、さすがの僕も怯んでしまう。 「ぁ~、ほら、よく言うじゃん? “本性現した”とか“化けの皮が剥がれた”とか、アレのこと」 「…それが、裏?」 僕は、コクンと頷く。 すると、これまた予想外な事に、蒼凪は高らかに笑いだした。 「アハハハハハハッ!! 何それっ、爆笑っ!! アハハケヒョッ、ゴホッ…」 おいおい、いくら何でもむせるほど爆笑は無いだろ。 こっちは真剣に言ってるのに… 「何がそんなに可笑しいのさ?」 僕が語彙を強めて問い掛けると、蒼凪はむせながら僕を見た。 「コホッ、ケヒョッ…ぁ~。いーかい朱染、裏だとか表だとか、そんなものに意味はないでしょ?」 未だむせつつ、かつ涙目で蒼凪は語る。 その眼差しは、いつになく真剣な空気を放っている。 半笑いだということを除けば… 「どうしてさ? 人間関係を結ぶ上で、人の心の裏表は重要だと思うけど?」 裏と表の関係性、そいつから逃れる術はないんだ。 僕らが、ニンゲンで在る限り。 それが、今の僕の真… 「確かにね。でもそれは、意味じゃないでしょ?」 …脳内決めゼリフの途中で、見事なまでに水を差すのは止めて欲しい。 不完全燃焼になるじゃないか。 「…何が、言いたいのさ?」 僕は、単刀直入に聞く事にした。 すると蒼凪は、待ってましたと言わんばかりにニイッと笑う。
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