交ぜても混ざらぬ朱と蒼

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ある日ある時、僕は唐突に、思った。 「この世にあるモノは全て、裏と表があるんじゃないか?」 例えばお金、例えば紙、例えば服、例えば家、例えば人、例えば例えば例えば… そんな風に考えだすと、僕の疑問は止まらない。 悪い癖だと思いつつ、思考を閉ざそうとすればするほど、疑問は溢れだす。 まるで、先端を摘まれたホースから、逆に水が勢いよく吹き出すかの如く。 「よっ、何考えてんのさ。エロい事?」 後ろから掛けられた軽くも明るい声が、僕の噴水の如く湧き出ずる疑問に水を差した。 「はぁ…」 誰が聞いてもそうと分かるほどに、僕は溜息を吐いた。 「こらこら、愛しのエリ…ハニーが来たってのに溜息は無いでしょ」 だが彼女はそう言いつつも、まったく気にした風もなくカラカラと笑っている。
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