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「おはようございます」
来た、今日もだ。
曲がり角を直進したいけど、それはどうしても出来ない。
学年で一、二を争う秀才のこの私に、遅刻は許されないの。
頑張れ、久里朱(くりす)。ここを上手く乗り切ったら、もう直ぐ大好きな学校よっ。
意を決して角を曲がると、今週五度目の笑顔が私を襲う。
「おはようございます」
ぎこちないかも知れないけど、一応笑顔で言った。つもり。
電信柱に寄りかかってたのか、ストーカー男子は片手で背中を払っているみたい。
「あのさ、俺、ずっと前から君の事が好きだったんだ」
勘弁してよっ、朝っぱらから顔面真っ赤にして告白とかっ。
確かに、私は可愛いし、スタイルも良いよ。それは認める。
けど、毎日同じ場所で私を待ち受けるのはどうかと思うよ。
これで同じ学校だったら……考えただけで立ち眩みしそう。
「その制服、隣町のですよね。学校に遅刻しないんですか?」
優しい口調で言ったけど、多分笑顔は引きつっていたと思う。
私の問いに、顔だけそこそこの変態男子は、こめかみを掻きながら視線を落とした。
「君に会えるなら、どうでも良い。君は僕の……女神なんだ」
背筋が、物凄い勢いで凍る。いや、どこの三流俳優ですか。
私、完全にロックオンされているみたい。どうしましょ。
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