遠い

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憂鬱の最上級は、何て言い表すんだろう。そんな表現は無いだろうけど、最悪な気分で一日を過ごす事は確定。 私の気持ちとは裏腹で、初夏の陽射しは朝でもお肌に悪そう。 夏休み前の期末テストがもう直ぐあるのに、これじゃあ勉強に集中出来ないって。 ウェーブした茶色の毛先を指に絡めながら、急ぎ気味で歩く。 取り敢えず、遅刻は出来ない。こんな事で皆勤賞の名誉を棒に振るなんて、馬鹿げている。 少し歩いた先にある角を左へ曲がると、民家を両脇に抱えた、黄土色の校舎が見えてきた。 真っ直ぐに伸びる校舎への道には、俗に言う遅刻組の面々が、間抜けな顔をして歩いている。 車が行き違うのですら難しい道を、横一列になって歩く男子。 パンツでも見せたいのかと思う程にスカートを短くした、今時メイクの女子群。 全員纏めて張り倒したい衝動に駆られながらも、清楚で可憐な私は、それらのモンスター達の間を縫う様にして進んだ。 それにしても、あの変態男子、どこかで見た事がある様な顔をしていたな。気のせい? 記憶力には自信のある脳に尋ねても、返答はどっちつかず。 いやいや、一週間以上挨拶し続けられたら、見覚えのある顔になるのは当然でしょ。 あの変態君、顔だけ見たら、美男子の部類に入るのかな。 まあ変態の冠を被っているのは間違い無いんだし、興味も零。気にする必要も無いかな。  
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