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大理石の神殿に、靴音が響く。
規則正しい、武人のそれが。
甲冑をまとい、マントを揺らめかせているのは、まだ若い武人だった。
緩く波打つ肩まで届く見事な金髪と、尖った耳。
特徴的な外見から、彼が長命種……『神』の血をひいているのは明らかだった。
淡い水色の双眸は優しげな光を湛え、もし彼が甲冑をまとっていなければ、武人であるとは誰も思わないだろう。
そして、整った彼の顔には、わずかに陰りがあった。
その原因は、この度の参内である。
神殿の最深部、謁見の間に到着した彼は、足を止め、呼吸を整える。
そして、良く通る声で言った。
「大主、烈将軍フェルド、お召しにより参上致しました」
「……入るが良い」
その声を確認してからフェルドは深々と頭を垂れてから、室内に足を踏み入れた。
待っていたのは、一人の男だった。
真っ直ぐに伸びる銀色の髪はさらさらと光を振り撒き、その瞳は海の深淵を思わせるような深い青色をしていた。
年の頃はフェルドとさして変わらぬように見えるが、渡ってきた時間は遥かに長い。何故なら彼は……。
「光神エルト=ディーワ様におかれましてはお代わりもなく
そう。
かつては世界を支える三者の一人。
今ではこの大地を統べる唯一の神『大主』。
調和者と闇神が姿を消した今、この世界を支える唯一の存在と言って良かった。
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