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「愛犬の名ですか?」
「そうです。」
「ブロンディですよ。」
「“前に言ったはずですが”、お忘れになられてしまったのですか?」
「申し訳ない。」
「最近は物忘れが酷いもので・・・。」
「そうですか・・・。」
「ところで、何故その話題を?」
「いえ、ふと犬の話題が出たことを思い出しましてね・・・。」
そう言って山本は誤魔化し、探った事を気付かれないようにした。
この遣り取りで、ヒトラーと称している男が“偽者”だと山本は断定した。
何故なら、“ヒトラーは愛犬の話題を出した事が無かった”からだ。
それは、愛犬だからこそ話の種として使われたく無かったのだろうが・・・。
ヒトラーと親しい間柄にある軍人から愛犬の話を聞く機会が無ければ、山本は偽者を見破ることは出来なかっただろう。
「さて、話を・・・。」
そう言って山本が話を再開させようとした瞬間・・・。
「ガリガリガリガリ」
船体が大きく揺さぶられるほどの衝撃と共に、金属が擦れる音が外から聴こえてきた。
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