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「ふぅー…」
「ぁっ…」
耳に息を吹きかけられ、全身から力が抜ける。
流石は天敵。
俺の弱点も知り尽くしているな。
もう抵抗は無駄だとわかり、早いとこ離れてほしいと思いながらも、大人しく我慢する。
「ようするに、進展あったか?ってことよ」
当然、進展というのはアレやソレの事。
ひぇ~っ、想像しただけで鳥肌が立つ!
「ねぇよ!」
嫌な想像に、半ばキレ気味に返答。
「…嘘言ってないでしょうね。嘘だったら後が怖いわよ?」
貴女様のような人の皮を被った鬼に、嘘なんて吐くわけありません。
「ないったらない!」
「…本当に?」
これだけ、はっきりと言っているのに声はまだ疑っている。
いい加減にしてほしい問い詰めに、業を煮やし怒り任せに反論する。
「あってたまるぁっ…!」
のはずが、言い切らない内に弱点をつかれた。
しかも、力んだせいか語尾の変な声が普通に出てしまい、女子達の耳にも届いたっぽい。
皆が、くすくすと俺を笑っているのが聞こえる。
違う!!
これは誤解なんだぁーー!!
俺の心のセリフは、
まるで浮気がバレた亭主である。
是非とも、実際に大声で叫びたい。
やっとの事で解放された俺は、
息を吹き掛けられた耳を押さえて静を睨んだ。
が、そんなモノ意にもかいさず静は平然とつまらなそうな顔をして立っていた。
「残念。まぁ、確かにあったら溜まらないわよねぇ~」
「意味が違ぇ…」
頭を抱える気力もなくなり、また机に突っ伏した。
あぁ…、きっとまた変な噂が立っちまうんだろうな……
全く朝から踏んだり蹴ったりの最悪な気分…。
神様ーッ!
どうかこの哀れな子羊に幸運をー!!
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