海上の鱗粉

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白夜「……?」 微かに感じた甘い独特の薫りと、何かが崩れ落ちる音に眉を潜めた 正面で刀を構える龍兄も何かを感じたのか、ふぃっと視線を観客に向ける 俺も観客をちらりと見て、動きを止めた 白夜「紅砂、晶羅!」 俺の視界に倒れている二人の少年と、それを戸惑ったように囲む大人たちが写った すぐさま船上イベントなんて放り出して俺と龍兄は二人に駆け寄ろうとした でも、そんな俺の進路を一人の女が塞ぐ 深くフードを被ったその女は静かに口を開いた ?「…行ってはダメ」 白夜「…っ、何言って…?」 俺はその女に反論しようとして何か違和感を覚えた 何か分からないけど引っ掛かる 俺が女に捕まってる間に龍兄が二人の元に辿り着いた 様子からすると二人が倒れた経緯を回りの大人に聞きつつ、二人の状態を確かめてるっぽい 白夜「悪いけど、今はあんたに構ってる暇、ないから」 女の横を通り過ぎた瞬間、あの甘い薫りがした 白夜「……っ!?」 俺は咄嗟に手で口と鼻を押さえる 白夜「お前っ」 気付いた俺にそいつはニッコリと笑った 最悪だ この女が立っていたのは俺にとって、――つまり、紅砂達がいる場所に対して風上 この甘い薫りをずっと風上から撒き続けていたとしたら… 予想通り、後ろで何人かの人が倒れる音がした それに続くざわめきと、だんだん小さくなるそれ いつの間に、騒がしかった甲板は静かになり、立っているのは白夜と女、二人だけになった ?「抵抗しないで下さいね」 女はニッコリと笑ったままそう言った .
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